『ナマコのからえばり』
目黒次は『ナマコのからえばり』です。サンデー毎日に連載したエッセイ・シリーズの第1弾で、2008年7月に毎日新聞社から本になって、2010年8月に集英社文庫と。ええと、これは細かな話がたくさんあるんですが、1か月前からベジタリアンになったという話が出てくる。尿酸値が高くなったから、というんだけど、いまでもベジタリアンなの?
椎名いや、そうでもない(笑)。
目黒続かないねえ(笑)。
椎名数値が高くなるとまた注意するんだけどね。
目黒ちょっと待ってね、一時期、プリン体が大変だとか騒いでいたのも、この尿酸値の問題だったの?
椎名同じだな。
目黒ということは完治はしないの?
椎名いや、おれはまだ痛風にはなってないんだよ。数値がこれ以上高くなったら痛風になるっていうんで、急いでベジタリアンになったりするんだ。
目黒ふーん。ま、いいや。ええと、世界をつまらなくした十の発明っていうのが出てくる。
椎名それ、面白いだろ?
目黒あれ、珍しく覚えているんだ。でも、これ、半分以上が言いがかりだよね。「スイカ イコカ」はこんなのが出てきたからキセルがしにくくなったとか、「DVD」は家庭で簡単に映画を見られるようになったんで野外映写会の楽しみがなくなったとか、こんなの全部言いがかりでしょ。
椎名だから面白いんだろ。
目黒あっ、そっちの路線か。社会批評のほうかと思った。それにしては、芸が決まってないよ。
椎名──。
目黒『世界一くだらない法律集』はケッサク。「他人の口の中に放尿してはならない」という法律がアメリカのある州に本当にあるなんて信じられないよね。
椎名あれがあっただろ。車を分解しなければいけないやつ。
目黒そんなのあったっけ?
椎名馬が車とすれ違うのを嫌がったら、車の持ち主は車を分解して部品を茂みの中に隠さなければいけないってやつ。
目黒まだ車が発明されて間もないころに出来た法律が残っている、ということなのかな。ええと、あったあった。これはペンシルヴェニア州の法律だ。信じられない法律がいっぱいあるよね。
「教会でおならをすると終身刑」(セントルイス州)
「子供が礼拝の最中にゲップを我慢できなかったら親は逮捕」(ネブラスカ州)
「風呂に入りながら歌をうたってはいけない」(ペンシルヴェニア州)
「犬は午後6時を過ぎたら吠えてはいけない」(リトル・ロック)
「猫と犬は喧嘩してはいけない」(バーバー)
いくら昔の法律でも、信じられないものが多いよね。この回はこの本を紹介するだけで終わっているぜ。
椎名まだまだ紹介したい法律があったよ。
目黒ええと、あとは中国の飛行機に乗ったときの話がすごいね。座席は指定されているのに中国人は好きに坐ってしまうから、そこは私の席だと言うと、空いているからそこいらに坐ればいいではないかと威張って言うってホント?
椎名こんなことに驚いていちゃ中国を旅行できないよ。それにロシアなんて飛行機に立ち乗りの人がいるんだぜ。
目黒前に何かの本で椎名が書いていたなあ。
椎名だんだん驚かなくなるよ。
目黒細かなことを言っていい?
椎名いいよ。
目黒パーカーで重要な点を列記する箇所があるんだけど、「防水」「でっかいフード」「ポケットが大きくてファスナーが付いている」「インナーがあって防寒になる」まではなんとなくその理由もわかるんだけど、最後に「腰にベルトがあってビシッと上下が区分される」とある。これはなぜ? その理由がわからない。
椎名そんなこと、書いてるの?
目黒あんたが書いた本なんだよ。
椎名ベルトのあるやつとないやつがあるんだけど、ベルトがあったほうが、全身がビシッとカッコいい(笑)。
目黒あのねえ。
椎名あっ、わかった。
目黒はい、椎名君。
椎名腰にベルトがあると、下から風が上まで入ってこない!
目黒最初からそう書いてね。
<<<『「十五少年漂流記」への旅』へ 『ひとつ目女』へ >>>
書籍情報はこちら » ナマコのからえばり