『「十五少年漂流記」への旅』

目黒次は、『「十五少年漂流記」への旅』。季刊「考える人」2005年秋号から2007年秋号まで連載し、2008年5月に新潮社と。「自著を語る」では次のように語っています。

この本は、ヴェルヌが十五少年たちが漂流した島のモデルとされているマゼラン海峡のハノーバー島という島から、ニュージーランドのチャタム島という島まで、実地踏査的に訪ねていく旅の話だ。現場に行くと、ヴェルヌの研究書などで言われているマゼラン海峡の島がモデルではなく、ニュージーランドにある島が絶対にそのモデルだということがよくわかった。それをじわじわと体験的に実証していく本である。

この本は知らない話が多かったのですごく面白かった。「十五少年漂流記」に出てくるチェアマン島と、ニュージーランドのチャタム島の地図が、単行本の177ページに出てくるけど、ホントにそっくりだよね。この「チャタム島モデル説」を唱えたのは田辺教授だけど、論旨が明快で、誰もが納得する。

椎名両方へ行ってみれば、すぐにわかるよ。ハノーバー島に立つと、5〜6キロ先に島々が見えるんだぜ。

目黒筏を作れば、すぐに渡れるか。

椎名モデルの島をハノーバー島だとした研究家は、誰も現地に行って調査をしなかったんだな。

目黒それを田辺教授は現地調査して、ハノーバー島じゃないと確信したんだ。

椎名漂流して流されたにしては、ハノーバー島じゃ遠すぎる。そういう理由もある。

目黒福岡のRKB毎日放送の仕事で、マゼラン海峡のハノーバー島とニュージーランドのチャタム島に行ったということなんだけど、これは東京で放送されたの?

椎名どうだったかなあ。放送されなかったんじゃないかなあ。

目黒あと、ロビンソン・クルーソーに第三部があったということ。新潮文庫は第一部だけの翻訳だけど、岩波文庫ではブラジル、東インド諸島、ロシア、ドイツをまわって英国に帰ってくる第二部まで翻訳されているから、無人島に漂着しただけじゃないとは分かっていたけど、まさか第三部があったとはなあ。そのことは岩波文庫の訳者あとがきに書いてあったのかもしれないけど。三部作のタイトルを一応並べておくと、こんな感じ。


 第一部「ロビンソン・クルーソーの生涯と不思議で驚くべき冒険」
 第二部「ロビンソン・クルーソーその後の冒険」
 第三部「ロビンソン・クルーソーの生涯と驚くべき冒険における真面目な反省」

この第三部が翻訳されてないのは、つまんないからかもしれない。反省しちゃうんだからなあ。

椎名高橋大輔『ロビンソン・クルーソーを探して』という本では、モデルとされたセルカークのいた島の、家の跡地まで特定していたよ。

目黒へーっ。

椎名セルカークを救出したウッズ・ロジャーズの『世界巡航記』には、島での四年間の生活のありさまを当人から聞くくだりがあって面白いよ。

目黒その『世界巡航記』は翻訳が出ているの?

椎名岩波の「17・18世紀大旅行記叢書」に入っている。

目黒あれかあ。いいなあ、椎名持ってるんだ。

椎名あれは買ったほうがいいよ。

目黒そうだよなあ。ええと、あと驚いたのは、脇筋の部分なんだけど、フォークランド近辺の海域に日本のイカ漁船が大量にやってきていたというくだり。一隻あたり三千万円の権利金を支払っていたというんだけど、五カ月の代金とはいえ、一カ月に六百万円だよ。そんなに払って元が取れるの?

椎名日本人はイカが好きだから、元が取れるってことだろうね。

目黒でも、日本のイカ漁船は年に三百隻も入っていたというんだよ。三千万円×三百なら総額で幾ら?

椎名違うよ。その三百隻というのは小さなイカ漁の船の数で、そうして取ったイカは母船にどんどん積んで、母船がいっぱいになると違う母船がやってくる。三千万円というのは、その母船一隻あたりの権利金だ。

目黒なるほど、納得です。

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