『メコン・黄金水道をゆく』
目黒次は『メコン・黄金水道をゆく』。小説すばるに2003年10月号から断続的に連載され、2004年に集英社、2008年の2月に集英社文庫と。これは、インドシナ半島を縦断するように流れるメコン川四五〇〇キロを、上流から下流までをゆく暑くて苦しい旅の顛末を書いたものですね。「自著を語る」では、次のように書いている。
この旅で、日本にたくさんある川と、世界の大陸を流れる長大な川とのとても大きな基本的な違いというものを実感し、川という水の流れと人間の生活に対してのかなり大きな興味がめばえた。
ラオス、ベトナム、カンボジアをめぐる旅だね。写真がかなり入っているけど、写文集ではない。写真紀行となっている。この明確な違いはあるの?
椎名何の違い?
目黒だから、写文集と写真紀行の違い。
椎名写真紀行のほうが文章の量が多い。
目黒そうか。単純なことだ。ところで冒頭に、ラオスのビザの話が出てくるんだ。入国したかったらここまで来い、と現地に行かないと発給してくれないというくだりなんだけど、どうしてビザは必要なの?
椎名昔は、入国した人の流れを記録するためにビザの発給が意味あることだったんだろうけど、いまは形骸化してるよな。ヨーロッパなんてEU加盟国同士ではビザいらないし、パスポートもいらない。
目黒えっ、パスポートもなくて移動できるの? じゃあさ、日本からヨーロッパにいくときは?
椎名入国ビザが必要な国と、不要な国でわかれている。
目黒じゃあ、入国ビザが不要な国に入って、あとはEU加盟国のなかを移動するだけならビザが最後までいらないってこと?
椎名そういうことになるな。
目黒それがどういう意味なのかはよくわからないけど(笑)。
椎名便利だろうそれは。
目黒ラオスの人口5万人のルアンパバーンという町では焼き芋が5〜6本でなんと一六円。安いよねえ。
椎名ラオスでは、ナマズがパクン、フナみたいのがパマン、黒い淡水魚メジナみたいのがパピア。みんな頭に「パ」がつく。なんでなのかと尋ねたら、「パ」というのは、ようするに「魚」という意味。だから本来は、「クン」「マン」「ピア」と言えばいいんだ。
目黒それ、この本の中で書いてるよ。
椎名じゃあ、コン島のことも書いている?
目黒なにを?
椎名コン島は中州だということ。ラオスのこのあたりで、メコン川の川幅は二〇キロほどあるから、その中に大小さまざまな島が四〇〇〇もある。その中でコン島は小さなほうだね。すぐそばに大きなコーン島があるからややこしいんだけど、そのコン島に滞在したのはよかったという話。それは書いてる?
目黒ああ、書いてるよ。何もない島だけど、だからこそ豊かに暮らしていると。
椎名その島に数日間いたんだけど、よかったよ。流れている時間が日本とはまったく違うからね。
目黒腰巻き文化圏の人はパンツをはかないっていうのも面白かった。
椎名小便するときにパンツは面倒だというのもあるけど、そもそもあんなのを履いていると暑いというのがあるね。
目黒なるほどね。ただ、この流域はどこの国でも食べるものがオレはだめだな。平均的な朝食風景としてトカゲが皮つきで出てくるところがあっただろ?
椎名あったなあ、どこだっけ?
目黒おいしそうだったのは、ベトナムのフランスパン。フランスに統治されていた国だけに、フランスパンの文化が残っているんだね。
椎名あれはたしかにおいしかった。
<<<『小魚びゅんびゅん荒波編 にっぽん海風魚旅3』へ 『大漁旗ぶるぶる乱風編 にっぽん・海風魚旅4』へ >>>
書籍情報はこちら » メコン・黄金水道をゆく