『太っ腹対談』
目黒次は『太っ腹対談』です。2002年5月に講談社から本になっている。小説現代に連載していたものです。東海林さだおさんとの対談集で、共著なんで評価は控えます。専門家をゲストに呼ぶことが多いんですが、やっぱり専門家の話は面白いよね。
椎名おれ、全然覚えていないんだよ。誰を呼んだの?
目黒第1回目のゲストが、医学部教授の富田勝先生。この先生がすごい。たとえば、こんなことを言うんだ。
「年を取ると白髪が生えますよね。あれは髪の毛が古くなって白くなっていくんじゃなくて、白い毛を新しく作っているんです。皮膚もそうです。わざわざ古いものを新しく作っているんです」
なぜそんなことをしているんですかとの質問には、「それも謎なんです」と富田先生は答えている。いやあ、びっくりするよね。
椎名他にはどんなゲストがいるの?
目黒ホットドッグ早食い世界チャンピオン。
椎名おお、その人は覚えている。
目黒すごいよこの人。この日の朝食は、パンを二斤トーストで食べて、牛乳を二リットル、丼飯を四杯。卵2パック二十個をオムレツとか目玉焼きにして食べて、あとはスープとサラダ。昼食はあまり時間がなかったからと、カップラーメン6個と、パンを2斤と丼飯4杯。これが普段の食事というからすごいよ。早食いの人なんだけど、練習として大食い取り組んでいる。
椎名早食いは短距離、大食いはマラソンであると。
目黒そういう格言も面白いよね。アメリカ人のホットドッグの食べ方は間違っているという細かな指摘も面白かった。どういう食べ方が早いかというと、パンとソーセージをわけて、パンをじゃぶじゃぶ水に浸す。そうすると口に含んだとき、もう溶けちゃうから、そのあとでソーセージを食べる。ところがアメリカ人は力にまかせてまとめて食べようとすると。
椎名この人、体がちっちゃい人なんだ。とても早食いできるなんて思わないよ。
目黒百六十九センチで四十五キロ、ウェストは六十というから、とても大食いの人には思えない。あとは、讃岐うどん穴場探検ブームを巻き起こした田尾和俊さんという方も強烈だった。
椎名どんな話の回だっけ?
目黒強烈な回だよ。讃岐うどんは麺であると、田尾さんは断言するの。麺がメインなんだから、添え物であるダシと具にどんなに金をかけてもダメであると。
椎名そうそう。讃岐うどんは、どんなにおいしい店でもダシは濃縮ダシ醤油のボトルだったりする。
目黒日本三大うどんは何と何ですかっていう椎名の質問に対する答えがいいよ。
「讃岐うどんはとにかく無敵です。あと二つ入れるの、いやや(笑)」
面白いのは、三重県の伊勢うどんにびっくりしたと椎名が言うと、その伊勢うどんを調査しに行ったことがあるって言うんだね。そばとうどんの専門誌に伊勢うどんの作り方とアップの写真が載っていたので、これは何やと、これで名物だって言いよるから確かめてこいってメンバーを派遣したことがあると言ったあと、田尾さんはこう付け加えている。「そいつ、近所の人に聞いて、ちゃんとした伊勢うどんの店に行ったのに、ふやけたうどんの上に甘辛いタレがかかっていて、食べたとき、腐ってると思うたって(笑)」その自信に満ちた言い方がとにかく強烈。世の中にはすごい人がいるなあって思ったよ。
<<<『風まかせ写真館』へ 『風のかなたのひみつ島』へ >>>
書籍情報はこちら » 太っ腹対談