『超能力株式会社の未来 新発作的座談会』
目黒次は『超能力株式会社の未来 新発作的座談会』です。本の雑誌の1994年から2000年まで断続的に掲載した「発作的座談会」をまとめたもので、2000年6月に本の雑誌から刊行と。
椎名4人座談会は何冊も出でいるけど、これは何冊目?
目黒3冊目かなあ。最初の本はいま読むと意外につまらなくて、がっかりしたんだけど、これは面白い。
椎名そうか。
目黒以前も言ったんだけど、沢野が活躍している回は面白いんだよ。たとえばね、「遺言の書き方講座」の回があって、木村さんに遺言の書き方を具体的に教えてもらうって回。あのころわからないことがあると、晋ちゃん、あれはどういう意味って質問して、晋ちゃん教室が突然始まったことが何度もあるけど、これもそういう回だね。
椎名あったなあ。円高をサバにたとえて教えてもらった(笑)。
目黒あったあった。誰かが円高を説明してくれって質問したんだよ。詳細は覚えてないけど(笑)。
椎名アメリカからサバを輸入するとき、最初はイワシ五匹とサバ一匹を交換してたんだけど、イワシ五匹でサバが二匹もらえると。それが円高だって。
目黒よく覚えてるねえ。そういう晋ちゃん教室が何回もあったんだけど、このときは沢野が木村さんに質問したんだよ。「目黒君の子供をぼくが遺言で勝手に認知していいの?」って(笑)。普通、遺言の書き方講座なら、他にもっと聞きたいことがあるだろ(笑)。何なのよこの質問は。想像を絶しているよね。
椎名ばかだねえ(笑)。
目黒他人の子供を勝手に認知しないでほしい(笑)。でもこういうふうに沢野が活躍すると、他のみんなもいきいきとするんだ。たとえば、「超能力株式会社の未来」の項、そうそう、単行本の表題になっているこの回は面白かったよ。何度も吹き出して笑ってしまった。15年くらい前に出た本で、いまでも笑えるってすごいよ。この4人座談会の1冊目が信じられないほどつまらなかったことを思えば、奇跡的だよね。
椎名そんなに言うなら読み返してみようかなあ。
目黒ぜひすすめるね。で、その「超能力株式会社の未来」の項で、超能力者を募集してテストをしようってくだりが出てくる。鉛の板の向こうに魚とリンゴを置いて、何が見えますかってテスト。すると木村さんがすかさず、「鉛が見えます」だって(笑)。
椎名くだらないねえ(笑)。
目黒鉛しか見えないならテストは不合格(笑)。
椎名ばかだねえ(笑)。
目黒「語源の謎に迫る」って回も面白いよ。ここでも沢野が活躍していて、天ぷらを油で揚げなくちゃいけないのに、ある人が水で揚げちゃったところからきたんじゃないかって沢野が言うのよ。水じゃ揚がらないって(笑)。
椎名ゆだるだけだ(笑)。
目黒「どさくさ」の語源の項で、これは木村さんの発言だけど、「昔、日本にきたフランス人で、ピエール・ド・サクサという人がいたんだ」って(笑)。これをうけて椎名が一言。「よくいたな、そんなやつ」(笑)。
椎名いねえよ(笑)。
目黒ただね、全体的にはこの本、いま読んでも面白いんだけど、全部で17本の発作的座談会を収録しているんだけど、その中の2本がつまらない。それが、昔話「桃太郎」の謎、と昔話「浦島太郎」の謎、この2本。
椎名そうか。
目黒言葉の遊びに終始していて、正直いってこれはちょっと辛い。で、どうしてかを考えてみたんだ。昔話の新解釈ってのは、方向としては「語源の謎にせまる」と同じなんだよ。どっちも言葉の遊びだし。それなのに、15年たっても面白い「語源の謎にせまる」と、読むに耐えない昔話の回との差は何なのか。
椎名何だ?
目黒だから、これも沢野の差だと思う。「語源の謎にせまる」は沢野が大活躍しているからみんなも引っ張られる。でも昔話の回は、ほとんど発言がないと思われるほど、沢野に精彩がない。そうすると、みんなの発言も空回りしてしまう。そういうことじゃないかなあ。
椎名ふーん。
目黒ではどうして、昔話の新解釈では沢野に精彩がないのか?
椎名そうか。簡単だ。沢野に知識がないからだ(笑)。あいつ、ものごとをよく知らないから、突っ込みようがないんだ。
目黒たぶんそういうことのような気がする。
椎名いまごろ気がついても遅いけどな(笑)。
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