『これもおとこのじんせいだ!』

目黒次は『これもおとこのじんせいだ!』です。これは初出欄を見ると、タウン情報全国ネットワークのタウン情報誌1995年4月号〜1997年3月号に連載したものと、「資生堂ホールセーラー」1994年10月号、11月号、1995年5月号に書いたものとなっているんですが、タウン情報誌の全国版みたいなものに書いたのは覚えているんだけど、この「資生堂ホールセーラー」に書いた3回分がよくわからない。わかっているのは、最初は椎名のところへエッセイの依頼がきたこと。ところが一人で書くのはしんどいからみんなで分担して書こうと椎名が逃げちゃって、6人のリレーエッセイになったこと。

椎名(笑)。

目黒各回のテーマは「女」「人生の転機」「お金」「部屋」「失敗」「旅」と椎名が決めて、そのテーマで6人が好きに書いていく。メンバーは椎名誠、沢野ひとし、木村晋介、目黒考二の四人に、ゲストが中村征夫と太田和彦。1998年3月に本の雑誌社から刊行されました。この方式、つまり六人でテーマ競作エッセイを書くというのは、簡単に単行本に出来るんで、これはいいともう1作、本の雑誌社から同方式でその後単行本を作りました(笑)。

椎名六人で書けば六分の一の負担でいいんだから、たしかに単行本はすぐに出るな。

目黒いやそのときは書き下ろしだったんで、なかなか書かないやつもいたから(笑)、それなりに大変だったけどね。

椎名おれの顔を見るなよ(笑)。えっ、おれ?

目黒おれの記憶では、椎名と沢野が遅れたと思う。

椎名そのときもこの六人?

目黒いや、椎名、沢野、木村、目黒の四人は変わらず、ゲストの二人が新メンバーだったような記憶があるけど、自信はないなあ(笑)。で、今回、久々に再読してみたんですが、特に、何の感想もない(笑)。そうだ。法廷に窓がない理由を知ってる?

椎名その窓から逃げられちゃうからか?

目黒普通はそう思うよね。違うんだって。

椎名じゃあ何だよ。

目黒気が散っちゃうからだって。証人尋問のとき、窓外に犬を連れた妙齢の婦人がパラソル片手に通りかかったら気が散るっていうんだけど、これは木村晋介の推理なので、これで本当に正しいのかはわかりません。

椎名なんだ、木村の推理なのか。

目黒あと、椎名が業界紙の記者だったころ、デパートの重役室で重役を待っている間に寝てしまったのは面白かった。

椎名デパートの重役室って空調は素晴らしいし、ソファもいいし、眠たくなるんだよ。

目黒でも、その失敗のあと、秘書課のお姉さんが友好的に取材依頼を取りついでくれるようになった、というのはいいね。「そういうところへ配属されるくらいだから応対のしぐさ言葉つき目つきとにかく全面的にしっかりしているし、どの人もきちんと制服を着てまことにりりしく、美しかった」というお姉さんだからね。

椎名高島屋に取材に行ったときだな。

目黒美人と言えば、世界の三大美人国は「C」が付く国が有力だとも椎名はここで書いているよ。

椎名C?

目黒コロンビア、キューバ、コスタリカだった。あ、こんな文章もある。

世界美人国の話のついでに、世界のブス国の話もした。これも候補百出したが、上位進出ビッグ3は、オランダ、イギリス、オーストラリアであった。理由はいろいろあげられたが、これこそ文句が出ると怖いので書かないのだ。

だって。国の名前を出しておいて、「文句が出ると怖いので書かないのだ」もないよね(笑)。

椎名イギリスを違う国に変えたほうがいいな。

目黒どういう意味?

椎名だって美人国が「C」のつく国だろ? だったら、ブス国は「O」のつく国にしたほうがいいよ。オランダ、オーストラリア、あと何か。

目黒なるほどね。

椎名いや、だめだ。

目黒えっ、どうして?

椎名オーストラリアはそもそも「O」じゃなくて「A」だ(笑)。

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