『人生途中対談』

目黒次は『人生途中対談』。これは椎名と東海林さんの対談集です。それもこの本のために対談したというのはなくて、さまざまな本にすでに収録されている二人の対談をまとめたもの。本に収録されてないものが2本、語りおろしが1本ありますが、それ以外の6本はすでに刊行ずみの本に入っているものです。だから最初の「僕らはカレーライスの中の肉が、ただひとつの肉だった」が1981年で、サントリークォータリーに載せた「地球は串焼きで結ばれる」が1995年。なんと15年間にわたる対談です。

椎名これ、タイトル、変わったよな。

目黒『人生途中対談』が文春から本になったのが1996年10月で、1999年9月に文春文庫に入ったときは『シーナとジョージの発奮忘食対談』。

椎名最初の『人生途中対談』はそれほど売れなかった。いや文春の人は売れたというんだけど東海林さんはタイトルがよくなかったと言うのさ(笑)。それで文庫にするときに改題したんだけど。あんまり変わらないと思う(笑)。

目黒椎名の単独著作ではないので、全体の評価印象は避けます。ここでは個別のコメントをつけるだけにしておきます。ええと、銀座に昔、キャバレー・ハリウッドがあり、サラリーマンのときにボーナスが出ると行っていたと書いていたんで驚いた。

椎名そうかあ。

目黒だって若いときの椎名が行っても、楽しくないだろ(笑)。サラリーマンとは言いながら、喧嘩三昧の日々を送っていたころだぜ。絶対に、あのころの椎名とキャバレーは合わない。銀座のクラブに仕事の付き合いで行くのならまだ理解できるんだけど、同僚とキャバレーとはなあ。あと、ちくわは子供のころの貧しい弁当のおかずだったという箇所が出てくる。

椎名ちくわを甘辛く煮たやつを入れてな。

目黒かつおぶしと梅干しだけなら、貧しい弁当だろうけど、ちくわが入るなんて贅沢だなあって。

椎名贅沢じゃないよ。ちくわだぜ。それとさ、養鶏場の息子がいてさ、毎日彼の弁当のおかずは玉子焼きなんだ。オレにすれば、すごく豪勢なんだけど、彼は恥ずかしいから弁当を隠して食べるんだ。

目黒ちくわと交換すればよかったのに。彼はちくわを食べたかったんじゃないかなあ。

椎名そうだよなあ。そういう知恵があればよかったなあ。

目黒それと、古本屋の棚に「椎名誠」「東海林さだお」と作者名のついたボードがあった話が出てくるんだけど、これは面白かった。新刊書店で使っていたものが古本屋まで流れてきたんだろうけど、この二人の作者名しかボードがないというのが面白いよね。

椎名いいことなのか、悪いことなのかがわからないと。

目黒それはさあ、新刊書店でこの二人のボードはもういらないから捨てておけって言われたとしか考えられない(笑)。絶対に喜ばしいことではないよ。

椎名そうだよなあ。

目黒東海林さだおさんが「青木まりこ現象」に触れ、自分もそうだと言っているのも興味深かったな。つい最近、本の雑誌がまた「青木まりこ現象」の特集をやってたでしょ。

椎名おお、やってたな。

目黒青木まりこさんにインタビューしてたけど、もう娘さんが高校生になっているとは月日のたつのは早いものだね。

椎名青木さんという人と結婚したんだよな。

目黒本の雑誌に投稿したときはもちろん独身だったんだけど、その後結婚した相手の方が青木姓で、「青木まりこ現象」からこれで一生離れられなくなったというのがおかしかったけど、もう娘さんが高校生なのかって。

椎名そうだ、この本、もう一度改題しているな。

目黒2012年1月に朝日文庫に入ったときは『大日本オサカナ株式会社』。こんなにタイトルを何度も変える本も珍しいよね。

椎名あんまりタイトルを変える本はよくないよな(笑)。それにタイトルに問題があるんじゃないと思う(笑)。

旅する文学館 ホームへ