『あやしい探検隊 焚火発見伝』

目黒次は『あやしい探検隊 焚火発見伝』。もともとは週刊ポスト(1994年4月1日号〜1996年8月23・30日号)に連載され、1996年10月小学館より刊行、1999年1月に小学館文庫と。これは林政明さんとの共著になっています。

椎名ポストに連載したやつか。

目黒このインタビューにあたってテキストになる椎名の本を再読して、気になるところに付箋を張って、そして椎名にあれこれ質問するというかたちでやってきているんですが、実は今回、この本を再読して付箋を1枚も張らなかった。

椎名(笑)。毒にも薬にもならないか。

目黒いや、最初に言っておかなければならないんですが、本としてはいい本です。たとえばね、料理の写真が全部カラーになっている。料理というのは色が大事なんで、それをカラーにしていることは素晴らしい。おかげで料理のおいしさが伝わってくる。あ、そうか、その前にこの本についてもう少し説明を加えておかないといけないね。

椎名ようするに、オレとリンさんがいろんなところへ行って、リンさんが作る料理をたべて帰ってくると。

目黒リンさんがどうやって料理を作るのかがメインで(この部分はもちろん、リンさんが執筆)、毎回その旅に参加したメンバーの座談会がつく。野田さんや沢野や、佐藤さんやPタカなど、だいたい四〜五人。多いときで六〜八人。椎名は毎回、冒頭に短いエッセイを書くだけ。あやしい探検隊シリーズの中では番外篇という位置づけだろうね。

椎名そうだな。

目黒だからね、正しくはこれ、リンさんの著作なんだよ。そこに椎名がゲストで出ていると。そう考えれば違和感もない。数えたんだけど、文庫で300ページあるのに、椎名のエッセイは全部で60数ページしかない。それも特に鋭いことを言っているわけではないしね(笑)。毎回の座談会にもちろん椎名も出ているからそこでの発言はあるんだけど、これも酒飲みのよた話だよね。別にどうってことない。つまり、リンさんの料理のページがいちばん充実している。ということはこれ、正しく言うなら料理本だよ。

椎名なるほどな。

目黒このインタビューを初めてもう2年になるので100冊くらいやってきていると思うんだけど、付箋を1枚も張らなかったのは初めてで──。

椎名つまらなかったと。

目黒いや、違うんだ。つまらないからではないんだ。つまらない箇所にも付箋を張るんだよ。どうしてこんなひどい文章を書いたんだとか、椎名に聞かなければならないからね。付箋を1枚も張らなかったのは、この欄の対象外だろうという気がしたからだと思う。一応、椎名も共著者として名前を連ねているから、こんなことを言っちゃいけないんだけど、これは椎名本ではないという気がして仕方がないんだ。

椎名印税も半分貰っているんだろうから、いまさら私の本ではありませんとは言えない(笑)。

目黒すごくヘンな箇所があるんだけど、言っていい?

椎名いいよ(笑)。

目黒これ、毎回の旅に参加した人が旅先でリンさんの料理を食べながら座談をするんだよね。旅とは別に、座談を収録したりはしてないよね。

椎名そんな手間がかかることはしてないと思う。どうして?

目黒その旅の写真が載っているんだよ。焚き火を囲んで飲んでいるところとか、みんなで料理を食べているところとか。その写真にゼンジ(元本の雑誌の社員)が写っているのに座談会にゼンジの発言がない。普通さ、実際の座談会で発言が少なかったりすると、ゲラの段階で加えてくださいと編集者が言ったりするよね。そのままだとおかしいから。特に写真に写っているのに一度も発言がないのはヘンだよ。こういう場合は必ずゲラで発言を加えるのに、ここではそういう痕跡がまったくない。

椎名これ、アベちゃんがいたころに作った本だけど、アベちゃん、アバウトだからそんなことは気にしていないんだ(笑)。

目黒ほら、この旅にもゼンジが写っているけど、こちらの座談会でもゼンジの発言はない。ゲラで埋めれば済むんだぜ。簡単なことなのに、なぜしないんだろ?

椎名おれたちもあまり気にならないなあ(笑)。

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