『馬追い旅日記』
目黒次は『馬追い旅日記』。1995年6月に集英社から出て、1999年3月に集英社文庫と。これは映画「白い馬」を製作するためにモンゴルで長期ロケしていた間、書き続けた日記をまとめた本だね。初出は「小説すばる」。これ、完全な日記で、1994年の1月1日から翌年の4月23日まで、毎日の記録。だから、『フィルム旅芸人の記録』がそうであったように、これも面白い。
椎名なるほどな。
目黒映画とは関係のない椎名の私生活まで描かれるから、いま読むとこういうことがあったなあとひたすら懐かしいんだ。たとえば1994年の1月に、三国図書館で公開座談会をするために、椎名、木村、沢野、そしておれと浜本で福井に行っている。このとき蟹をたくさん食べたのを覚えている。あれから20年がたってしまったのかと実に感慨深い。ええと、まず何からいこうかなあ。開高健賞の話題からいこうか。椎名が選考委員をやってたことも知らなかったんだけど。
椎名いまはやってないよ。
目黒第3回の選考会の様子がこの本に出てくるんだけど、この年の受賞作はなしと。で、第1回からずっと受賞作はなしなんだって。すごい賞だよねえ。1回目から3回目まで受賞作がなかったら、普通はやめちゃうよねえ。その後、この賞はどうなったの?
椎名いや、普通に受賞作は出たよ。ただ、このころはTBSブリタニカだったけど、版元は変わっている。
目黒島清恋愛文学賞の第1回選考委員をやってたことも知らなかったよ。いまはやってないよね。
椎名うん。
目黒「終了後酒席があり、タテマエばかりの酒席なのでひたすらつかれた」とあるのが面白かった。それではクイズです。
椎名なんだよいきなり。
目黒この本の中で、ぼくの好きな方言としてベスト10が発表になっている。椎名が1位にした方言は何ですか?
椎名あれだよあれ。──と、っていうやつ。なんだっけなあ。博多弁だ。
目黒さすがだねえ。じゃあ2位は?
椎名土佐弁。
目黒それは4位。この本では高知弁となっているけど。
椎名あとは覚えてないなあ。
目黒①博多弁②小倉弁③沖縄ウチナー④高知弁⑤鹿児島弁⑥河内弁⑦広島弁⑧福島弁⑨秋田弁⑩京都弁、これが椎名が選ぶ方言ベスト10。
椎名全然覚えてない(笑)。
目黒おれ、小倉には毎年行ってるけど、博多弁と小倉弁の違いがわからない。
椎名おれもいまはわからないなあ。
目黒あと、意外だったのは、こんな記述がある。「朝までやってやや負け。すっかり明るくなってしまった歌舞伎町でタクシーをつかまえて座席にくずれおちる」とあるんだよ。このころは麻雀、椎名、朝までやってたんだ。最近は深夜1時くらいまでだよね。
椎名20年前だから、まだ若かったんだなあ。
目黒おれとトクヤと岡留さんと椎名の4人で、しょっちゅうやってるんで驚いた。だって9月20日にやって26日に同じメンツでまた朝までやってるんだよ。
椎名よく負けてたなあ。目黒がいつも勝ってた。
目黒いやいや。
椎名トクヤが好きなんだよなあ。
目黒あとね、この年の8月に山形林間学校をやってるんだ。映画を撮った年だよ。あんなに忙しいときによくやったよねえ。それと、長岡に行った10月23日の記述に、「夜、地元の寿司屋でビールと刺し身。古本屋で何冊かうれしい本を手に入れる」とあるんだけど、このときどんな本を買ったのか書名を書いてないんだ。本を買ったと書くのなら、書名を書いてほしい。どういう本を買ったのかを知りたいよね。
椎名そうか。
目黒それと、A社から『水域』の、B社から『アド・バード』の、それぞれアニメーション化の打診がくると。2年後にはホネフィルムで『武装島田倉庫』を実写で映画化したいと計画している、と書いているんだけど、どれも実現はしなかったよね。
椎名ただ、『武装島田倉庫』はコミックになる。
目黒いつから?
椎名このインタビューが公開されるころにはもうコミック化されているはずだよ。
目黒それは楽しみだね。
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