『発作的座談会』
目黒次は『発作的座談会』です。平成2年11月に本の雑誌社から出て、平成8年10月角川文庫に収録と。この「発作的座談会」は何冊も出てるけど、これは1冊目です。これがいま読むと、実はつまらない(笑)。
椎名そうかよ。
目黒これは、おれと椎名と沢野と木村さんが無意味なことを語り合うという座談会で、もともとくだらないんだけど、最初のころはたしかに面白かった。だから、時間があくと本棚から引っ張りだして読んだりしてた。そうやって何度も読んできたから飽きちゃったというのもあるんだろうけど、作りが目に見えちゃうんだ。それがいま読むと辛いね。
椎名おれは面白かったけどなあ。
目黒最近読んでないでしょ?
椎名うん。
目黒おれだって最初は面白かったんだよ。10年くらい前までは読み返して何度も笑ったもの。でも刊行から22年がたつわけで、そうなると歳月の風化に耐えないということじゃないかなあ。
椎名ふーん。
目黒面白かったのは、この本、注をつけているんだけど、苦し紛れの注があってね。
椎名どういうの?
目黒たとえば、誰かの発言に、「タッチ」というのが出てくると、すかさず注で小学館発行の写真週刊誌と補足するのさ。これ、はっきり言って当時は苦し紛れだった。下の部分を白っぽくしないために、こんな注はいらないよなと思いながらも、レイアウトの関係でいれていた要素が強い。ところがいまになってみると、「タッチ」なんて写真週刊誌があったのかよって。
椎名おれも覚えてないなあ。
目黒でしょ? そういう固有名詞につけた注が意外に今になってみると役立つ。それと、公開座談会を幾つか収録していて、野田知佑さんや佐藤秀明さんをゲストに呼んで、テーマは地理だったり、社会だったり、科学だったりするけど、わりに真面目な座談会をしている。これがいま読むと面白い。
椎名時代を越えて読む力があるんだ。
目黒ところがそれ以外のところがねえ。バカ話は10年はもっても20年はもたないんだなあと、しみじみ思うね。
椎名でも、発作的座談会の何冊目か忘れちゃったけど、『超能力株式会社』ってあっただろ? あれは面白かったけどなあ。
目黒『超能力株式会社』はもっとあとだからまだ面白いのかも。
椎名まだ腐ってない?
目黒そうそう。
椎名なまものかよ(笑)。
目黒この『発作的座談会』はいちばん最初のやつだから、22年前だしね。もうだめだよね。椎名のデビュー直後のエッセイ集を、ここでめちゃめちゃに批判したけど、まあ、あの初期エッセイよりはもつけど、それでもこれも同じようなもんだな(笑)。
椎名当時は売れたんだろ?
目黒増刷につぐ増刷で、いい時代だったよ(笑)。そのころ神保町の書店に新刊に買いに行ったら、よその版元の営業マンらしき人物がこの『発作的座談会』を指さして書店員に聞いている現場に遭遇したことがある。これ、売れているんですかって。いやあすごい売れてますよっていう書店員に、いいなあこんなんで売れて(笑)。一生懸命に作った本が売れないのに、「こんなんで売れて」面白くなかったんだろうけど(笑)。
椎名おれたちに勢いがあったころの話だなあ。
目黒おれね、最後の座談会の本に入っているやつで、好きなやつがあるんだ。「朝起きて誰もいなかったらどうするか」ってやつ。
椎名覚えてる!
目黒あれ、いいよな。
椎名おれが戦車に乗るやつだろ(笑)。
目黒そうそう、くだらねえの(笑)。
椎名あれはいま読んでも面白いな。
目黒なまものだから、いまのうちに読んでほしいね(笑)。
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