『椎名誠[北政府]コレクション』
目黒次は『椎名誠 〔北政府〕コレクション』です。これは私、北上次郎が編んで、2019年7月に集英社文庫から刊行と。まず、最初に収録作品の一覧をつけておきます。
①「猫舐祭」
②「みるなの木」
③「赤腹のむし」
④「滑騙の夜」
⑤「海月狩り」
⑥「饂飩商売」
⑦「水上歩行機」
⑧「ウポの武器店」
⑨「遠灘鮫腹海岸」
⑩「爪と咆哮」
⑪「スキヤキ」
この11篇を収録したんですが、ラスト2篇は作者の強い希望で足しました。というのはこの2篇にはどこにも「北政府もの」に共通するディテールがないので外していたんですが、「北政府ものとして書いた」という作者の主張があり、「北政府ものではない」という証拠もないことから追加したわけです。その逆が「三角州」という短編で、世間ではこれが「北政府もの」と認知されていますが、読み返すと「北政府もの」とは矛盾するディテールがあるので、ここでは外しました。こういうことはこの文庫の編者解説に書いているから、ここで改めて言うことではないんですが、付け加えることが何もないんで。
椎名じゃあ、おれのほうから一言。
目黒頼みます。
椎名これは10年以上前から目黒が言っていたアンソロジーで、大変ありがたい。感謝しています。
目黒それくらいだよね。困ったな。そうか、こういうときのために取っておいたネタがあるんで、それをやろうか。
椎名何?
目黒数回前に、『われは歌えどもやぶれかぶれ』をとりあげたとき、睡眠障害の話だけで終わったことがある。『われは歌えどもやぶれかぶれ』の他のことにまったく触れることが出来なかった。残りはいつかやりますってことでそのときは終わったんですが、ここでその続きをやりましょう。
椎名いいのかい? 今回は「北政府コレクション」の回なのに、他の本の続きをやるなんて。
目黒とはいってもあまりスペースもないから、幾つかだけ。まず、「日本のラーメン屋さんは夏しか冷し中華を出さない。あんなにうまいものをと不思議でならない」と書いているんだけど、以前の本ではあまり好きではないような書き方をしていて、その理由を聞くと「量が少ない」とわけのわからない理由だった(笑)。で,結局好きなの嫌いなの?
椎名嫌いなんて書いたかなあ。
目黒好きなんですか?
椎名好きです。
目黒面白かったのは、5歳から9歳まで千葉にいて、21歳から2年間は江戸川区にいて、そのあと武蔵野に30年。つまり、総武線と中央線をタテにつなぐところに椎名はずっと住んでいる、という話。言われてみたらそうだよね。
椎名それは、ワタリが気がついたんだ。
目黒さすが秘書だね。おれも気がつかなかった。おれと沢野は新宿から、小田急線でヨコにずれちゃってるけどね。椎名はずっとタテなんだ。
椎名ヨコを信用していないんだね(笑)。
目黒それと、空飛ぶ人間の話を「文學界」に書いているとは知らなかった。これは完結したの?
椎名まだ完結していない。年に4回の連載だから、なかなか終わらない。
目黒どのくらいで終わるの?
椎名あと2年かなあ。
目黒河野典生が小説新潮に書いた「翔ぶ一族」という小説があるんだ。未読だけど、椎名のその小説が完結したら一緒に読みたいなあ。
(この対談は2020年1月27日に行われました)
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