『犬から聞いた話をしよう』
目黒次は『犬から聞いた話をしよう』です。新潮社から2017年12月に出た犬の写真集ですね。このタイトルは椎名がつけたの?
椎名担当者じゃないかなあ。
目黒楠瀬?
椎名そう。
目黒素晴らしいタイトルだよね。この書名だけで写真の向こうに物語がぐんぐん広がっていく。椎名の著作が全部で何冊あるのか知らないんだけど、300冊くらいかなあ、その中からタイトルベスト10を選べば、必ず上位に入るよ。
椎名そうか。
目黒ずっと前から、犬の写真集を作るべきだって言ってた私としては、ようやく1冊になったことがなによりも嬉しかったけど、仕上がりも文句なし。このカバー写真だけでいいよね。飼い主が食事を終えて出てくるのを店の外で待っている写真。
椎名アルゼンチンで撮った写真だな。
目黒これは椎名ファンの間では有名な写真だけど、それをちゃんとカバーに持ってくるところが素晴らしい。それと扉のワンサの写真。ワンサは、映画「うみ・そら・さんごのいいつたえ」を撮っているときに、どうしても1シーン、犬が必要になり、処理寸前のところをスタッフが引き取ってきた犬だけど、そのころの記憶が残っているのか、見上げるようにしている顔のアップが、この写真集の扉に使われている。可愛いよなあ。
椎名ワンサについては後日譚がある。
目黒それがこの写真集に書かれているので、ワンサのファンは読んでほしい。映画が完成して各都市のホールをまわって上映会をしたとき、福島にいたワンサが郡山の上映会にやってきた。撮影から8か月しかたってないのに、ワンサは黒く大きな犬に成長していて、スタッフたちと久々に再会したんだね。
椎名はたしてワンサはどのように変貌していたか。
目黒それはこの写真集を読んでのお楽しみにしておこう。ちなみに、扉の写真は撮影時のものだから、ワンサが生まれて数カ月のころです。もう1枚、写真を選んでいい?
椎名(笑)、いいよ。
目黒127ページのガクの写真。ガクがまだ幼いときの寝姿。
椎名ああ、サンダルに頭を乗せて寝ているやつな。
目黒もう天使だよね。カバーの待っている犬、扉の上目使いのワンサ、そしてサンダルに頭を乗せて寝ているガク。これが私の選ぶベスト3。でもね、他にもいい写真がいっぱいあるんだ。たとえば54ページの写真。
椎名どれ?
目黒どこで撮ったのか思い出せない、とここでは書いているけど、一匹があくびしていて、もう一匹がそのあくび犬に顔を寄せているの。
椎名韓国で撮ったんじゃなかったなあ。
目黒1枚1枚の向こうに、ドラマがひろがっているんだ。まあ、おれが犬好きってこともあるのかもしれないけど、ずっと見ていても飽きない。これ、もう1冊できるんじゃないの? 犬の写真集。
椎名全部、楠瀬に渡してあるんだ。その中から彼が選んでこれを作ってくれた。
目黒じゃあ、楠瀬に会ったら言っておこう。もう1冊作ってくれないかって。
(この対談は11月25日に行われました)
<<<『北の空と雲と』 『あるいて行くとぶつかるんだ』>>>
書籍情報はこちら » 犬から聞いた話をしよう