「ガクの冒険」
原作=『ガクの冒険』(佐藤秀明著、本の雑誌社)
ⓒ1990年、ホネ・フィルム
カラー、撮影=16ミリ/上映=35ミリブローアップ版、55分
撮影=佐藤秀明
音楽=高橋幸宏
出演=ガク、野田知佑、カメ、牛、馬、ヒツジ、チャボ、ヤギ、カエル、中村征夫、木村晋介、あやしい探検隊総出演
ロケ地=四万十川
椎名誠 自作を語る
二本の極私的16ミリ未完成映画の後しばらく映画を離れていたのですが、あるときアフリカに行っていたときに、宿で酔った頭でボーッと考え事をしていたら、ふと思い浮かんだのがガクと野田知佑さんがカヌーで川を下ってくるという映像だった。これは映画みたいだなと思ったとたんに「そうだ、映画にできないだろうか」という考えが生まれてきた。普段「あやしい探検隊」でやっているキャンプの風景にカメラを持ち込んで、スタッフも全部仲間うちでやってしまえばできるはずだ。そう思って発作的に電話をかけまくって仲間を集めてしまいました。 プロは撮影助手ただ一人。その他はすべて素人だけで作ってしまったのですが、今考えるとおそろしいことをしていいましたね。スクリプターの重要性もこのときに初めて知りました。ぼくが現場で発作的に予定を変更したり新しいアイディアを出すので、沢田康彦には何度となく「それでは絵がつながりませんよ」と言われてしまった。あんまりうるさいのでしまいには、沢田が近寄ってくると「しっしっ」と言って追い払ったりしていたけれど、今思えばひどい話ですね(笑)。 (椎名誠 新潮文庫 1996年『自走式漂流記1944〜1996』より)