『単細胞にも意地がある ナマコのからえばり10』
目黒それでは、『単細胞にも意地がある』です。サンデー毎日の2014年4月6日号から11月16日号まで連載した分をまとめた一冊で、毎日新聞社から2015年3月1日発行と。「ナマコのからえばり」の10弾です。もう10冊目とは早いね。
椎名毎週6〜7枚の原稿を書いていくから、月日がたてばどんどん原稿がたまっていくんだよ。塵も積もれば山となるだ。
目黒ええと、高知県に行ったくだりで、大きなお屋敷をただ同然に貸してくれるサービスがあって、それを利用したと出てくるんだけど。
椎名若者が都会に流出するなどして、昔大家族だった大きな家が無人状態になっているところが結構あるんだよ。それを県の「おもてなし課」が貸し出すわけだ。
目黒そういう地域は他にもたくさんあるだろうから、「大きなお屋敷をただ同然」サービスは全国的にあるの?
椎名全国的かどうかは知らないけど、他にもあるみたいだな。ようするに、最初はお試しに来てもらって、気にいったら移住してほしいと。
目黒なるほどね。雑魚釣り隊のように大人数の場合は便利だよね。
椎名ちゃんと厨房も付いているから、自分たちの飯を作ることも出来るしな。
目黒でもさ、椎名たちみたいに大人数で移動するグループは、他にあまりいないんじゃないの? そんな大きな屋敷に家族3〜4人で泊まっても仕方ないし。
椎名いまはおれたち、20人くらいだからな。
目黒あとは、これ、いい光景だよねえ。
椎名なんだ?
目黒小平の家を売ることになって、みんなで集まるくだり。花見をかねて集まるんだよ。椎名と弟のユーちゃんの一家が勢ぞろいして、はっと気がつくと椎名がいちばんの長老になっている。穏やかな春の日で、みんなで桜を見るとてもいい光景なんだけど、そこにこういう一文がある。「小さな子まで入れると三十ぐらい集まった」。
椎名それがどうかしたのか?
目黒三十人はいないでしょ。
椎名だって、ユーダマの子が三人いて、みんな連れ合いがいるんだぞ。
目黒あのね,椎名と一枝さん、ユーちゃんと奥さん、これで4人。ユーちゃんの子供と連れ合いで6人。ここまでで合計10人。この数字を覚えておいてね。
椎名(笑)。
目黒ユーちゃんの孫が何人いるのか知らないけど、各2人だとして計6人。ここには岳一家が参加したかどうかは書いてないんだけど、仮に5人全員が参加しても、総勢21人。これは多く見積もった話だから実際は15〜16人だったと思う。
椎名いいじゃんそんなの。
目黒違うんだよ。とてもいい光景なのに、30人という嘘くさい数字が入ると、一族が集まったというのも創作なんじゃないかって信用されなくなる。途端にリアリティがなくなっていくのが心配なんだ。たぶん、「たくさん集まった」という感じを出したくて、つい「三十人」という大げさな数字を出しちゃったんだと思うけど。
椎名(笑)。
目黒あとは、池林房の喫煙問題。そんなに気になる? おれは禁煙してからまだ10年たってないけど、飲み屋は気にならないなあ。気になるのは、タクシーに乗ろうとしたら、明らかに前の客が吸ってただろというときと。
椎名ホテルな。
目黒そうそう。禁煙部屋が取れなくて仕方なく喫煙部屋にすると、ドアを開けた瞬間にわかるよね。でも、飲み屋は気にならないよ。
椎名そのうち慣れるんだけど、最初は気になるんだよ。で、トクヤに言っておれの座る場所は禁煙にしてもらった。
目黒えっ、もう禁煙になってるの? いつも椎名が座る場所の一帯が?
椎名そうだよ。
目黒でもこの本にはこう書いている。
店主とは三十年来の付き合いだから一度頼んでみようと思うのだが、これが頑固な奴ですんなり聞いてくれるかどうか。駄目なら残念ながら三十年ぶりに別の酒場を探すことになるのだろうか。
脅しているよ(笑)。このあとに本当にトクヤに言ったら、あのへんを禁煙にしてくれたんだ。気がつかなかったなあ。
椎名今度見てみろよ。
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