『おれたちを笑うな!ーわしらは怪しい雑魚釣り隊』

目黒『おれたちを笑うな!』は、「つり丸」の平成23年2月号〜平成24年9月号の連載と、週刊ポストの平成24年10月〜平成25年3月の連載を足したものです。ちょうど連載の移行期間なので、ふたつの雑誌に書いたものがここで混在している。まあ、同じメンバーで同じことをしている行状記だから、何の問題もないんだけど。「わしらは怪しい雑魚釣り隊」の第4弾です。まず、これがすごいねえ。

椎名なに?

目黒最低最悪の宿を一軒あげるなら迷わず佐渡島の「民宿ホテル大野亀ロッジ」だ、というんだよ。名指しだよ、いいの? こんなこと書いちゃって。

椎名つぶれちゃって今はないよ。

目黒そうか。潰れたのか。すごいよね。「一度炊いて残ったご飯を水で洗い、むしろの上で乾かしてまた水につけて煮たような」ご飯、というんだ。なにこれ?

椎名すごいだろ。信じられないよ。

目黒それと前も批判したけど、またやってる。

椎名なに?

目黒文庫版の105ページの写真を見てください。「冷え冷えのソーメン食い放題」の写真キャッチが付いているものの、全面的に白いだけで、これがソーメンなのか何なのか、さっぱりわからない。

椎名どれ?

目黒はい、これです。これがソーメンとわかる?

椎名なるほどなあ。でも、おれ、写真までは見てないんだよ。

目黒著者はあなたなんだから、読者に対して責任があるでしょ。どうしても写真をチェックする時間がないなら、ポイントだけを伝えて若頭にチェックさせるとか方法はいくらでもあるよ。これはダメ。

椎名はい、わかりました。

目黒もちろん長所もある。

椎名そういう話がいいなあ(笑)。

目黒タコを採るくだりで、その具体的な方法を書いているんだよ。イシガニをとりつけた二本曲がりのひっかけ針(テンヤ)を海底まで落とし、トントントンと踊るようにしてタコを誘い込み、タコがそれに乗ると「ムワーッ」と仕掛けが重くなるから、二十秒ほど待って一気にエイヤッと合わせて引き上げると。非常に具体的に書かれている。

椎名そうか。

目黒これまでの雑魚釣り隊の本でここまで具体的に詳しく採り方を書いたものはなかったよ。釣りを知らない人間にはとてもわかりやすくて、これが面白かった。さらにそれを受けて、竹田が次のように言うのがいい。

あっ、おれわかった。これは! という女をひっかけるときにムワーッとくるときがあるじゃないですか。おっこれはいけるかな、と思って期待に胸弾ませていると途中で逃げちゃうの。バラしたわけですよ。あの軽くなった悲しみはいやだなあ。

これも目に浮かぶよね。

椎名竹田は面白いやつなんだよ。

目黒ただね、この本の椎名はやる気がないことが多い。自分でも「最初からやる気がなかったので、三十分投げたりリールを巻いたりしているうちに飽きて寝てしまった」と書いた回があったりする。

椎名あのね、弁解していい?

目黒いいよ(笑)。

椎名船釣りって面白くないんだよ。

目黒どうして?

椎名船長が威張っているんだ。船に魚探があって、それを見ながら船を進めて、魚のいるところにいくだろ、そうすると何メートル下にいるとか指令がくるわけ。つまり船長の言う通りに釣るしかない。だから、おれと西澤は船釣りが好きじゃないんだ。

目黒やる気がなくなるのには理由があると。

椎名そうそう。

目黒でもね、この本は平成23年ごろに書かれているんですが、全身に寒けがするとか体温が高いとか、家を出るときからテンションが低いことが多いんだよ。何か調子が悪い時期だったのかなあ。

椎名覚えてないな。

目黒椎名も年だから、もう隊長の座は若頭の西澤君に譲って、顧問にでもなったほうがいいんじゃないの。

椎名顧問かあ。まだまだ隊長でいたいなあ。

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