『わしらは怪しい雑魚釣り隊 エピソードⅢ』

目黒『わしらは怪しい雑魚釣り隊 エピソードⅢ マグロなんかが釣れちゃった篇』です。これは2011年10月にマガジン・マガジンから刊行され、2012年12月に『わしらは怪しい雑魚釣り隊 マグロなんかが釣れちゃった篇』のタイトルで新潮文庫より刊行。まず著者の言葉を引いておきます。

沖釣り雑誌「つり丸」に連載している、その名の通り雑魚釣り隊という、名前からしてそもそも情けない集団が日本のあちらこちらに出没する。編集部が貧乏で予算がないのでわれわれはいつもキャンプに自炊。釣れたら喜び、釣れないと互いに罵り合うという、わかりやすい、そうしてつくづくバカバカしいけれどもストレス解消にはもってこいのはちゃめちゃな釣り行脚を語っている。最初の頃はそれこそクサフグとかベラとか、食ったら死んでしまうキタマクラなどという雑魚中の雑魚をつっていたわれわれも、バカはバカなりに経験を積んだらついにマグロまで釣ってしまったというのが今回のハイライトである。雑魚釣り隊だから雑魚を釣るのが使命なのに、マグロなんか釣ってしまうと刺身にしかならねえじゃねーか、と釣った奴を罵る。罵りながら,結構うめいうめい、と言いながら酒を飲む喜びは、釣ったやつも釣れなかった奴も同じなのである。

ええと、このシリーズについては第1巻を絶賛したことがある。長老が大活躍して、とにかく抱腹絶倒の面白さだった。ところが第2巻では長老が全然活躍せず、このインタビューで批判したことがあります。でも、もう批判しないことにしました(笑)。たとえばこの第3巻にも長老が登場するけど、第1巻のようには活躍していない。それはね、長老が変わったわけじゃないと思うんだ。あの性格がかわるわけがない(笑)。たとえばこの第3巻には長老が不参加のとき、電話してきて、自分はなぜ不参加なのかを延々語るシーンがある(笑)。そこは相変わらず面白いんだよ。でも長老が活躍するのはそこだけ。つまり長老は変わっていないんだけど、椎名がそれを記録することに飽きちゃったんだと思う。だからね、もういいよ。長老が活躍しなくても。「怪しい探検隊」シリーズと同様に、仲間との楽しい旅の報告に撤すればいい。注意するのは、面白くしようとしないこと。たとえばここにこういう一節がある。「タイっておめえ、タイコタタキのタイじゃないんだな。タイカレーのタイでもないんだな」こういう痛いギャグはもうやめること。この一点だね。

椎名わかった。

目黒たとえばね、特AAAキャンプ地の条件、というくだりがあるんだけど、こういう話をどんどん書いていけばいいんだ。その同じ項に、よくないキャンプ地の環境とは、というくだりがあるけど、これは痛いギャグすれすれなので、こういうところは注意だね。どういうふうに痛いか、ここで読み上げようか。

椎名いいや、もういいです(笑)。

目黒あとね、ゴカイやイソメ類を椎名が苦手とは知らなかった。これは驚いたよ。釣りするときには餌として付けなければいけないから、みんな、普通に触ってるだろ。

椎名だって気持ち悪いよ。半分になってもくねくねと生きているんだぜ。

目黒そんなの初めて聞いた。あれだけ気持ちの悪い話が好きなのに。

椎名いやだなあオレ。

目黒この本は雑魚釣り隊の3巻目だよ。どうしてもっと早く告白しないのよ(笑)。あとはこれか。細かなことなんだけど、最後のほうに名嘉元が荒れるくだりがある。椎名は隣のテントでその大声を聞いているんだけど、「朝まで生激論にならなくてよかった」と書くだけで、何が原因だったのか書いていない。こういうの、すごく気になるよ。何か不満があるのかなって。

椎名だってデータマンがそれしか書いてないんだもの。

目黒聞けばいいじゃん。このとき名嘉元はどうして荒れてたのかって。

椎名あいつ、酔っぱらうといつも大声でわめくんだよ。何を言ってるのか、わからないことが多いよ。

目黒じゃあ、そう書けばいいじゃん。いつもの大声、無意味なわめき声が聞こえたとか。それを何も書かないと、喧嘩してるのかとか、普段な仲がいいように見えて、実は仲よくないんじゃないかとかなんとか、思っちゃうぜ。

椎名ま、いいんじゃないかなあ。

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