『あやしい探検隊 北海道物乞い旅』

目黒次は『あやしい探検隊 北海道物乞い旅』です。2011年9月に角川書店から書き下ろしで刊行され、2014年10月に『あやしい探検隊 北海道乱入』と改題して角川文庫と。改題した理由については、単行本と文庫版のあとがきに書かれている。ようするに、あらかじめその土地の知り合いに連絡し、これから訪問するので何かくださいというという方法にしてしまったと。だから結果的には、食い切れないほどの食い物を貰い、飽食三昧となり、全然物乞いしていない。つまりタイトルと内容が合ってないので文庫版では改題したというわけ。ちょっと長いんですが、著者の言葉があるんで、まずそれを引用しておきます。

「あやしい探検隊」は「雑魚釣り隊」が出来るはるか以前、いまから30年前に登場していた。「探検隊」といいながら別に何もタンケンせず、当初は日本の島々に上陸して、浜辺で焚き火キャンプをし、飲んで歌って夜を過ごすという、これも大変お気楽な遊び旅だった。大体ぼくは常に年上年下かかわらず同じような趣味趣向を持った連中とそういうアバウトな旅をすることが多く、タイトルこそ違うものの、実態は「雑魚釣り隊」の行状記とほぼ同じようなものである。ただし今回はテーマがあった。飽食グルメといわれて久しい現代、その逆のひもじさと貧食をベースに、できるだけ人に恵んでもらいながら旅ができないだろうか、という時代へのささやかな反逆精神が根底にあった。昔、外国の旅で先方のミスによって一週間近く知らない土地を食べ物を求めてさすらったことがあるので、その日本版を目指したのである。読んでもらえればわかるが、結果は惨憺たるものだった。その惨憺たる、という意味は少々複雑で、事態は思いがけない展開を見せ、われわれは全員で堕落していったのである。ひとつだけこの本で特筆すべきは、25年ぶりのまるまる一冊のカキオロシというところで、ダイコンオロシに迫る偉業をなし遂げたという点だ。

ええと、まず苦言を呈します。この本の刊行が2011年9月30日で、次回のテキストである『わしらはあやしい雑魚釣り隊 マグロなんかが釣れちゃった篇』の発売が10月10日。なんと2週間も間が空いてない。これが一冊が旅ものエッセイで、1冊が私小説というならまだわかるけど、両方とも同じようなエッセイで、しかも登場人物がかなりだぶっている。竹田君が南アフリカのワールドカップで買ってきたブブセラをブーブー吹くのでうるさかったというエピソードは両方に出てくる。もちろん行った場所は違うだけど、いくらなんでもこれはないよ。版元にいくら言われたとしても自分で刊行スケジュールは管理しなくちゃ。

椎名書き下ろしたのがよくないんだな(笑)。

目黒そういうことではない(笑)。苦言の2は。

椎名まだあるのかよ。

目黒冒頭にね、「カキオロシはダイコンオロシよりエライ」というギャグを書いているんだけど、これもう10回目くらいだぜ。もうやめたほうがいい。

椎名そうか。

目黒面白くないし、痛々しい。それで考えたんだけど、赤マントやナマコ・シリーズは普通なのに、雑魚釣り隊とあやしい探検隊のルポに、どうしてこういう痛々しいギャグが入ってくるかというと、著者が「面白くしよう」としているからなんだよ。だから、もうその意識は捨てたほうがいい。そうすると、こういうつまらないギャグも姿を消すと思う。親しい仲間とどこかに行って、釣りしたり遊んだりして帰ってくる──そういう旅の報告に撤するべきだよ。

椎名はい。

目黒以上が総論で、あとは各論。トクヤが歌舞伎揚げが好きとは知らなかった(笑)。もう歳なんだから、あんな脂っぽいもの、体によくないんじゃないの。

椎名一日中、ぼりぼり食ってるよ。

目黒あとね、大洗からカーフェリーに乗って苫小牧に行くんだけど、どうしてカーフェリーって大洗からなの? 不便だよね、東京からどのくらい?

椎名2時間くらいかな。これはね、大型のトレーラーがばんばん乗ってくるから、そういうトレーラーがいっぱい待機する広い場所が必要なんだよ。

目黒なるほど。

椎名乗るまで2時間もかかるのはたしかに不便かもしれないけど、乗っちゃえば楽だしさ。大勢でいくときはいいよ。

目黒釧路の仁にタンメンを食べにいく話があるんだけど、そもそもこの店を椎名が知ったきっかけはなに? 麺の甲子園で椎名が熱烈推薦したものの、キャベツの千切りに1回戦で負けたタンメン(笑)。キャベツの千切りに負けるのは可哀相だよ(笑)。

椎名あれは合議制だから仕方ないんだ。おれはもちろん勝たせたかったんだけど。最初に知ったのはテレビだな。丹頂鶴を見に行ったんじゃなかったかなあ。で、偶然入ったのが釧路の仁。うまいよ、それから何度も行っている。

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