『続 怪しい雑魚釣り隊サバダバ サバダバ篇』
目黒それでは『わしらは怪しい雑魚釣り隊 サバダバサバダバ篇』です。雑誌つり丸に連載して、マガジンマガジンから『続 怪しい雑魚釣り隊サバダバ サバダバ篇』として平成21年6月に刊行。平成22年5月に新潮文庫と。「雑魚釣り隊」シリーズの第2弾だね。ええとね、これはつまらなかった(笑)。
椎名パート1は、お前、褒めてくれただろ?
目黒このパート2のポイントはふたつ。パート1で、同じ話を延々繰り返して隊員を恐怖のどん底に追い込んだ(笑)長老が、ここではほとんど活躍していないんだよ。もう一つは、あの乱暴で愛すべきキャラクターの西澤もあまり活躍していない。というよりも、彼は仕事で不参加とかで、このパート2に登場すること自体が少ないんだ。つまりパート1の二大キャラクターが活躍していないんですよ。これは辛いよね。
椎名そうかあ。
目黒旅そのものはたぶんパート1よりも充実していると思う。海仁が立派なゴムボートを1年間借りだすことに成功してるし、さらになんと小笠原まで遠征しちゃう。パート1は近場ばかりだったのに大遠征だよね。あとは相模湾でマグロにカツオを釣り放題とか、パート1より明らかに釣り旅そのものは充実している。でもね。
椎名なんだよ。
目黒いやはや隊を思い出すんだ。旅そのものは充実しても、その旅を描いたエッセイが面白いかどうかはまた別の話なんだよ。いやはや隊行動記録に躍動感が欠けていたように、ここにも同じものを感じる。
椎名このあと、週刊ポストに連載の場を移して、文体も変えたような気がするな。
目黒それを期待するしかないか。
椎名でもさ、固定ファンは読んでくれてるよ。
目黒それは違うんだ。いまいるファンをどんどん狭めていくか、どんどん広げていくかということなんだ。いい機会だから言っておくけど、このシリーズは新しい読者を掴むチャンスだったと思う。というのは、怪しい探検隊シリーズは長いシリーズだから、いまさら新しい読者は入りにくいよね。大沢在昌が言っていたけど、新宿鮫シリーズだけ読んでないファンが意外に多いんだって。つまり、いまから全部読むのは大変だって手を出さないと言うんだよ。長いシリーズにはそういうことがあるんだね。椎名の怪しい探検隊シリーズは、厳密には続いているわけじゃないけど、読者からすると同じことが言えるかもしれない。でも、この雑魚釣り隊は、いかにも椎名の新しいシリーズの装いがあるから、この雑魚釣り隊が面白ければ、怪しい探検隊シリーズを遡って読んでくれる可能性があるわけだよ。
椎名ふーん。
目黒売れっ子作家がなぜ売れっ子であり続けるのかといえば、そういう不断の努力を怠っていないからだと思う。
椎名手を抜くなと。
目黒あのさ、基本的なことを質問していい?
椎名いいよ(笑)。
目黒狙っているもの以外が釣れたときのものは、全部雑魚っていうんだよね。
椎名そうだよ。
目黒じゃあさ、マグロを狙ってて、カツオが釣れたらそのカツオは雑魚なんだ。
椎名そうだな。
目黒だったら、何を狙ってるか言わなければいいんじゃないか。
椎名どういう意味?
目黒本命を明らかにせずに、釣れたものを見てから、これを狙ってたんだよって言えば、雑魚を釣ったことにならないよね。いや椎名たちはあえて雑魚を釣りに行ってるわけだから話は逆だけど。
椎名釣る魚によって、道具も餌をポイントも異なるから、そういうわけにはいかない。
目黒あ、そうか。船を運転する人にあらかじめ言っておかないとだめなんだ。
椎名おれたちは雑魚釣り用の竿で、しかも陸張りだけどな。
目黒なに、その陸張りって。
椎名船に乗らずに陸から釣るわけ。好きじゃないんだよオレたち、船に乗るのは。
目黒どうして? 船酔いとかするの?
椎名おれは船酔い、一度もしたことがない。
目黒ずいぶん昔、パタゴニアにいったとき、チリの荒れ狂う海を船で行ったことがあったよね。あのときも大丈夫だった?
椎名これが船酔いかなって、ちらっと思った(笑)。
目黒その程度なのか。すごいな。でも、だったら釣りのときに船に乗らないってどうして?
椎名だって船に乗れば確実に釣れるもの。全部お膳立てしてくれるんだから。はい、ここで竿を下ろしてください。はい、竿をあげてくださいって言われた通りにすれば、絶対に釣れるんだぜ。そんなのつまらない。
目黒ちょっと待って。このパート2で相模湾でマグロとカツオを釣り放題だったとき、船に乗ってポイントまで行ってるぜ。
椎名そりゃあ、時々は乗るよ。
目黒で、ばんばん釣れて、すごく嬉しそうだったよ。文章が躍ってる(笑)。
椎名釣れれば嬉しいよお(笑)。
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