『奇食珍食糞便録』
目黒ええと、次はイヤだなあ。この本、読みたくなかった。『奇食珍食糞便録』。東京スポーツの連載「椎名誠 風雲ねじれ話」内の「世界糞便録」「奇食珍食」(2012年〜2014年)を加筆・修正して、2015年8月に集英社新書から発行と。こういう気持ち悪い話、嫌いなんだよ。
椎名この本、売れてるんだぜ。
目黒誰が読むのよ。
椎名好きな人、多いんだよ。
目黒こういうのを好んで書くのって、椎名と小泉武夫先生ぐらいでしょ。
椎名そんなこともないと思うけど(笑)。みんな、好きだよ。
目黒そうかなあ。いやだなあ。ちょっと待って、これ、東京スポーツに連載ということなんだけど、喧嘩の話、書いてなかった? 東スポでは。
椎名書いてたよ。
目黒この『奇食珍食糞便録』はそれとは別の連載なの?
椎名そもそも、「椎名誠 風雲ねじれ話」という連載があって、その中で喧嘩の話を書いたり、糞の話を書いたり、奇食珍食の話を書いたりしているんだ。で、この新書は、その糞の話と奇食珍食の話をまとめたと。
目黒その「椎名誠 風雲ねじれ話」はまだ続いているの?
椎名続いてるよ。いまは旅の話を書いている。
目黒前に書いてた喧嘩の話は本になっている?
椎名まだなってない。
目黒ふーん。まあ、いいや、早く終わらせよう(笑)。ええと、中国のトイレで水が横向きに流れるって話が出てくるんだけど、これは一部のトイレの話だよね。全部がそうなっているって話じゃないよね。
椎名横向きが多用されてるね。
目黒でも傾斜がないと、よほど強い水圧でないと最後まで流れていかないよね。
椎名そうなんだ。となりの親父がした糞が流れてきて、おれのところで止まったりする。すげえ迷惑なんだ。こないだ、台湾に行ったときも横向きに流れてきたな。
目黒台湾も開放便所なの?
椎名いや、個室だったけど、下はつながっているから、隣から流れてくる(笑)。間欠水なんだよ。
目黒えっ?
椎名だから、一定の時間を置いて水が流れてくる。
目黒ぼたんを押して流すわけではないと。
椎名そう。一度隣のおやじの糞が自分のところに止まると、次の水が流れてくるまで、そこにじっとしてる(笑)。
目黒あとは、ローズ・ジョージ『トイレの話をしよう』(NHK出版)という本を、椎名がこの新書で紹介しているんだけど、すごい話がてんこもりだよねえ。たとえば、インドの掘り込み便所は1千万箇所あって、この糞便を集めて運ぶ「スカベンジャー」(糞尿処理人)がいるって話が出てくるんだけど、これ、どこへ運ぶの?
椎名糞を溜める場所があって、そこに運ぶ。でも掘り込み便所はまだいいほうで、板を渡しただけのところでするトイレがある。
目黒その板に両足を乗せてすると書いているね。
椎名それを手で集める人は、カーストのさらに下の「アウト・カースト」と呼ばれる人々の仕事で、「統計によって幅はあるが、インドには四十万人から百二十万人のマニュアル・スカベンジャー(手作業の糞尿処理人)が存在する」って、ローズ・ジョージ『トイレの話をしよう』に出ている。この本はすごいよ。世界のトイレに関する本で、ここまで詳しく書いている本はないんじゃないかなあ。
目黒四十万人から百二十万人って、すごく幅がありすぎなんだけど。
椎名政府が認めてないから、ちゃんとした統計がないんだ。
目黒ヤクーツクの一流レストランのトイレが、いろんな人の糞便で山盛りになっていた、という話もすごいよね。これは椎名の体験譚だけど。
椎名最初は、たまたま壊れているトイレだろうと思ったけど、全部のトイレが山盛りになっていた(笑)。ヤクーツクを訪れたのはもうずいぶん前のことだから、今はどうなっているか知らないけど。
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