『さらば新宿赤マント』
目黒それでは『さらば新宿赤マント』です。週刊文春2011年5月26日号〜2013年4月4日号に連載し、2013年10月に文藝春秋から本になって、2015年文春文庫と。23年間続いた赤マントの最終巻です。この本については「自著を語る」で椎名は次のように書いている。
いつも装画の沢野には何も注文をつけないできたが、この本には新宿赤マントらしきものが空を飛んでどこかに去っていくようなものにしておくれ、と初めて注文をつけた。
空を飛んで赤マントはどこかへ行ったんだね。そう思って本のカバーを見ると、ちょっと感傷的な気分になります。ええと、エッセイ集なんで細かなことばかりですが、いろいろとあります。まずは、チベット人は肉をあまり食わないと出てくるんだけど、以前も聞いたかな。ま、いいや。これはなぜ?
椎名チベット人にとって家畜は大切な財産だからね、食べたら減ってしまうだろ。
目黒それだけのことか。なんだか以前も聞いたことがあるような気がする。あとは、タマネギは世界中にある、というんだけど、他に世界中にある野菜って何?
椎名ジャガイモかなあ。北極圏でも取れるぜ。どんなに過酷な土地でもできる。
目黒あ、そういうことか。なるほど。家の近くのコンビニが強盗に入られて、それがなんと3回目だというんだけど、これはどこのコンビニ?
椎名角にあっただろ?
目黒えっ、あそこ? 狙われやすいのかね。
椎名おれの家に防犯カメラがついてるから警察がきたよ。こっちに逃げたらたしかに映っているかもしれないからね。
目黒3回目のとき、椎名が1時間違いでそのコンビニに行ったと。
椎名もう少しで遭遇してた。
目黒話はどんどん飛んでいきますが、世界でいちばん心がやさしいのはミャンマー人であると。あ、そうか、カンボジア人もやさしいと書いている。それに比べて、アメリカと中国がいちばんわからないと。世界中を旅している椎名が言うんだから間違いないよね。ミャンマー人がやさしいのは仏教?
椎名宗教ではなくて国民性じゃないかなあ。
目黒ふーん。ま、いいや。
椎名ホントに細かなことばかりだな。
目黒たくさん呑む日は、事前にサントリーのセサミン3〜4錠を呑んでおくと。最近では協和発酵のオルチニンを3〜4錠呑むと。これはいまでも続けてるの?
椎名いまはやってない。
目黒それは二日酔いにならないように呑んでたの?
椎名そうだな。
目黒日本ファンタジーノベル大賞の候補になった「ベイスボウル」が面白そうだよね。センターを守る選手が主人公の小説で、グラウンドがやたらと広いから、バッターが見えない。で、三日くらい守備をしている。夜になると試合は中断するから、近くの小屋で自炊の寝泊まりをしている。
椎名面白そうだろ。
目黒読みたいなあ。
椎名ときどき思い出して、あの人どうしてる、と編集者に聞くんだけどね。
目黒あとはこれだ。大崎映晋さんの海女の写真が美しい。
椎名えっ、お前、その写真どこで見たの?
目黒この本に載ってなかった?
椎名赤マントに写真は載ってないよ。
目黒そうだよねえ。おかしいなあ。見た記憶があるんだけど。ええと、ここだ。
水中を垂直に潜っていく殆ど全裸の海女の姿は美しい。海水がちょうどいいフィルター効果をだし水圧が裸の体をおしつつみ、よりシャープな肢体に見せてくれるのだ。
あれれ、文章だけで写真は載ってないな。なんで、写真を見たように錯覚したんだろ?
椎名おれの文章を読んで、映像が浮かんだというわけか。
目黒本当だ。すごいね。シャープな肢体に見せているのは水圧が裸の体をおしつつんでいるからだ、っていうのは椎名が推測したの?
椎名中村征夫に聞いた。彼も水中で全裸写真を撮ってるから。そのとき話したんだ。すべての女は水中で撮りたいって。
目黒なるほどね。
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