『ガス燈酒場によろしく』
目黒ええと、『ガス燈酒場によろしく』です。週刊文春2010年3月25日号から2011年4月21日号まで連載して、2012年8月に文藝春秋から本になって、2015年2月に文春文庫と。赤マントの23弾だね。これは冒頭の、医学用語を覚えるための参考書のくだりが面白かった。
椎名ジュンク堂の医学書の棚で見つけたんだよ。
目黒医学関係の書棚には似合わない赤、青、緑、橙色の派手な表紙で、下品な色使い(笑)とも椎名は書いているなあ。
椎名『骨単』『肉単』『臓単』『脳単』だよ。すごいよこれ。
目黒『臓単』の表紙は、骸骨があぐらをかいて片手をあげ、「役立つ雑学が、五臓六腑に染みわたる!」だって。すごいなあ。
椎名中も面白いよ。
目黒そうだね。「下骨喉頭蓋靱帯」とか、「正中舌喉頭蓋ヒダ」とか、まるで椎名SFに出てくる不気味な生き物みたい。専門書っておれたちが知らないだけで、もしかすると面白い世界なのかもしれないね。
椎名そうだな。
目黒2010年公開の映画「ザ・ウォーカー」を紹介する回があって、これが面白そうだなあ。「座頭市とタケシ・コヴァッチを足したような主人公が、二十七世紀の核戦争で破滅した世界を放浪する」って言うんだよ。しかも「そのストーリーも素晴らしいが、映像技術も素晴らしい」んだって。観たいなあ。
椎名お前、観てないのか?
目黒これはすぐに観るよ。DVDがもう出てる?
椎名出ているんじゃないかなあ。
目黒あとはね、文庫解説の話が面白かった。自著の解説を断られると「そうか、あの人はオレを断ったのか、じゃあもうこっちはあの人の本なんて読んでやんねえ」とココロの狭いぼくはついそう思ってしまう、と書いているけど、この気持ちはわかるよ。ある著名作家は文庫本に解説をつけないんだ。どうしてなのかなあと思ってたら、解説を頼むと借りが出来るから自分も書かなければならなくなる。だったら自著の文庫には解説をつけないでおこう、っていう考えなんだって。こないだ、編集者から聞いた話なんだけど。あと、これもすごいね。中島義道さんが解説を断った話。
椎名なんだっけ?
目黒中島義道さんが『偏食的生き方のすすめ』という本に書いている話を椎名が紹介しているんだけど、自著が文庫になったとき、どなたかが書いた解説原稿を読んで、自著の巻末に載せるのを断ったというんだよ。
椎名気にいらなかったんだろうな。
目黒書いたほうはショックだよな。断られたほうの立場におれはなっちゃうけど、えっ、どこがだめなんだって知りたいよね。
椎名もちろん、原稿料は版元が払っただろうけど。
目黒あと、同じ項で、『女子高生メイドと穴奴隷女教師』なんて文庫本の解説を読みたいって椎名が書いているけど、こういうのは解説がないんだよ。
椎名そうか。
目黒解説のない文庫本って結構あるよ。
椎名ふーん。
目黒面白かったのは、赤マントが連載1000回を迎えたんで、その1000回の内容を分類してるんだ。事務所のスタッフが集計したんだろうけど、その結果が、
酒と食い物の話 52%
旅の話 20%
本の話 17%
新宿の話 7%
焚き火の話 7%
とあるんだよ。全部足すと103%になっちゃうから、なんだかヘンなんだけど(笑)。そうか、旅の話の中に、焚き火の話が出てくることもあるから、そういうのは両方にカウントされるんだ。そうだよね。
椎名さあな。
目黒まあ、その5つの話が中心ということだけはわかるよね。
椎名これしか書いてないのかよ。ほかのこともたくさん書いてきたような気もするけどなあ。
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