『どーしてこんなにうまいんだあ!』
目黒次は『どーしてこんなにうまいんだあ!』です。平成二十四年にマキノ出版から出た本ですが、これはなんと椎名誠初の料理本。初めてだよね?
椎名食い物に関することはたくさん書いてきたけど、食い物だけで一冊というのは初めてかもしれない。
目黒これは面白かった。どうしてこんなにうまいんだぁ!っていうから、世界中のうまいものを紹介する本かと思ったら違うんだね。この本のメインは「シーナが好きな黄金のバカうま料理24」というページで、これが全体の半分以上を占めている。で、このベスト24が何かと思ったら、1位が「醤油マヨスパゲティ」、2位が「そばの死に辛食い」、3位が「モヤシ釜揚げうどん」。つまり椎名の好きな「男の簡単料理」で、どうやって作るのかという具体的なレシピと、いかにそれがうまいのかというエッセイ付き。
椎名1位はなに?
目黒だから、醤油マヨスパゲティ。
椎名あ、そうか。
目黒好きな食べ物は、比較的に原型がわかりやすいものが多いって椎名は書いているけど、なるほどそうだね。それともう一つは、ベスト5は全部麺だ。4位が「トマトそうめん」だし、5位は「熱々天ぷら冷え冷えうどん」と、ベスト24のうちベスト5はすべて麺。「トマトそうめん」はうまそうだなあ。
椎名トマトの酸味とタマネギの甘い味がそうめんに合うんだよ。
目黒この本の最大の長所は、料理の写真が全部カラーであることだね。食べ物はカラー写真でないとその美味しさが伝わらないよ。椎名のこれまでのエッセイとか写文集の大半は、食い物が白黒写真なの。そうすると、うまそうに見えないというよりも、その食い物の形態そのものがよくわからないんだ。本としては致命的だったと思う。ところがこれはカラーだから、形態もわかるし、美味しそうだし。
椎名そうか。
目黒この本の冒頭に、南米のアンデス山中を旅していたときに日本人と会って、彼から醤油をわけてもらう話が出てくるけど、そのときウォークマンと交換したなんて、これまで書いてこなかったぜ。醤油をわけてくれるなんて親切な日本人だなと思ってた。
椎名ただじゃくれないよ。
目黒でも、この話はこれまで何度も書いてきていたのに、ウォークマンと交換したことを書いたのは今回が初めてだよ。
椎名そうか。書いたと思ってた。
目黒そのウォークマンが少しだけ故障気味で。
椎名おれは落語を聞いていたから、そういうことに使う分にはいいんだけど、音楽はだめかもしれない。回転が少しおかしかったから(笑)。
目黒ビールのつまみベスト3をあげているのも興味深い。というのは、①串カツ②バクライ③鮭の皮、がベスト3なんだけど、串カツが好きだなんて初めて知った。これも書いたのは初めてだと思う。
椎名ビールには脂ものが合うんだよ。
目黒3位の鮭の皮は意外だなあ。ホントにビールに合うの?
椎名鮭の皮だけを集めたものを売ってないかなあと思うよ。
目黒売ってるの?
椎名まだない。だから、みんなのを貰うしかない。社員旅行の朝食に鮭の切り身が出るだろ。その皮をもらって集めてご飯の上に載せるの。
目黒つまみだけじゃなくて、おかずにもなるってこと?
椎名うまいぜ。
目黒若いときから好きだったんだ。
椎名そう。
目黒この本は、食い物の写真を全部カラーにしているのが素晴らしいけど、全体的には安直な本だよね(笑)。
椎名そうか。
目黒だって、椎名の好きなベスト24の他は、昔の探検隊の写真を載せて思い出話をちょっと書いて、あとは椎名のインタビューだぜ。
椎名まあ、そうだな。
目黒全体的には安直な作りだけど、仕上げとしては素晴らしい本になっていると言い換えてもいい。つまりこの本はアイディアの勝利だと思う。誰が作ったのかは知らないけど、編集者がいいんだね。
<<<『うれしくて今夜は眠れない』 『ガス燈酒場によろしく』>>>
書籍情報はこちら » どーしてこんなにうまいんだあ!